帝京大学のフェローを終えて/2011-09-10

  • 田口 憲士
  • 大分医科大学 出身
  • 2001年 入局

6月26日から7月21日までの約4週間、帝京大学病院を研修してきましたのでここに報告させて頂きます。

帝京大学病院は外傷センターとイリザロフ・テイラーフレーム臨床コースの2つフェローの募集を行っています。昨年の6月から約1年間外傷班に所属している私にとって、今年10月から当院に設立される外傷ユニットの参考と、イリザロフ法、Taylor Spatial Frame (以下TSF)の見識を深めるために、前半の2週間は外傷センターで、後半の2週間はイリザロフ・テイラーフレーム臨床コースでフェローすることを選択しました。

外傷センターには、外傷の分野では著明な新藤正輝先生、井口浩一先生、黒住健人先生の御三方がそろっており、毎日のカンファ・回診においてセミナーでは聞けない生の声が聞くことが出来ました。新藤先生の骨盤骨折、井口先生の脊椎外傷の手術では、四肢外傷にとどまらず骨盤、脊椎外傷においてもstaged managementを実践されていることにdamage control の治療戦略を再認識させられ、また黒住先生の踵骨骨折の手術では骨折のメカニズムに基づき整復、固定されていく流れをリアルタイムに体験でき、非常に有意義なものでした。外傷センターでは、御三方の下で勤務される先生方は皆さん若く、外傷に関与する神経・血管損傷、脊椎外傷等の全ての手術に参加し、さらにほとんどの先生方が東京都以外からフェローで来られています。脊椎がちょっと苦手で、医局人事で外傷に行き着いた自分と違い、若い学年の時から目的意識を持って外傷に臨んでいる姿勢に学ぶことも多かったです。

変形癒合や感染性偽関節に対する治療を希望された患者が全国各地から骨折診という帝京特有の外来を受診されます。後半まわった、イリザロフ・テイラーフレーム臨床コースではそういった難治性の患者の治療を学ぶことが出来ます。竹中信之先生にマンツーマンで外来・病棟見学、創外固定の歴史や偽関節に対する治療戦略等をレクチャーして頂き、多くの時間を割いていただいたことには恐縮するばかりでした。外来・病棟ではTSFを装着している患者はほとんどいませんでした。帝京にはユニラテラル型の創外固定器具とイリザロフ創外固定やTSFと連結するコネクタがあり、ユニラテラル型の創外固定器具で単純に骨延長を行い、しかも過延長させておいてから短期間でTSFを用いて矯正が行われるからです。患者のADLが保たれ、車の運転も支障なくされており、患者の満足度はリング型と比較し高いものでした。手術では欠損の大きい右大腿骨顆上部の粉砕開放骨折に対して、渡部先生をはじめとする骨折診グループ(同門の寺本先生、高木先生も参加!)の二期的手術を見学することが出来ました。関節内骨折を整復・仮固定後、外側からLCP-DFを、次に内側から患側のLCP-PLTを設置した後、大腿骨顆上部の骨欠損部に対してMasquelet法(四肢のsegmental bone lossに対し、first stage でデブリドマン後の欠損部に対しセメントで補填しておき、second stage でセメント周囲に誘導された骨膜内に海面骨を移植するtwo-stage techniqueのこと)が行われていました。初めてみる術式に加え、複雑な骨折にもかかわらず見事に整復・固定がなされていました。そして帝京最後の手術で、大腿骨の変形癒合に対し松下隆教授による骨粉砕術が行われました。帝京ならではの粉砕術を学会誌ではなく、しかも松下教授自らの手技を目の当たりに出来たのは一生の宝といえます。この時、デジカメが故障して動画を撮影できなかったのが一生悔やまれるところですが…。

以上、私が4週間で経験し得たほんの一部を紹介致しました。正直学んだことは多く大変刺激を受けるものでした。また、2週間同じ時期にフェローを御一緒した名古屋第二赤十字病院の樋口善俊先生は、私と違う角度から質問をされ、そこから得られる情報は大変参考になりました。仕事を超えた話にも多々話題がおよぶこともあり本当に楽しい2週間でした。最後に留守を預かる先生方には、4週と長期間にわたり外傷の対応をしていただき本当に感謝いたします。

余談ですが、私が住んでいた場所は都営三田線の板橋本町駅から旧中山道を歩いて10分、板橋本町商店街に面した場所で、スーパーからコンビニ、銭湯、コインランドリー等そろっており、またウイークリーマンションに生活必需品がすべて用意されているため、長崎から身一つで何一つ不自由することはありませんでした。外傷を勉強したい先生はもちろん、帝京大学病院へフェローを希望される先生は大学病院勤務が一番の近道と思われますがいかがでしょうか?