Fellowship @ オランダ Erasmus大学/2018-07-15

  • 土居 満
  • 鳥取大学 出身
  • 2009年 入局

H21年入局の土居です。
今回2018年4月9日から5月18日までの6週間AOTraumaのFellowとしてオランダのErasmus大学病院にて研修をさせて頂きましたので報告させていただきます。

AO財団はご存知の方も多いかと思いますが、骨折治療にかけては全世界で最も影響力のある団体で教育、インプラント開発などに力を入れています。今回Fellowshipに応募し幸運にも選んで頂き短期ではありますが海外留学を経験することができました。

自分が行ったのはオランダのロッテルダムにあるErasmus大学病院で、オランダに11あるLevel1 Trauma Centerの一つです。ロッテルダムはオランダ第2の都市で、ライン川などが注ぐデルタ地帯の河口に近い港町で貿易量としては欧米で最大の規模を誇ります。サッカーが好きな日本人には現在コンサドーレ札幌に所属する小野伸二選手が所属していたフェイエノールトの本拠地というとなじみがあるかもしれません。

これまで外傷センターの先生はアメリカ、ドイツ、ニュージーランドにFellowshipに行っており、自分としてはこれまで誰も行っていないところで日本ではあまり整形外科医が強くない分野の勉強をしたいと思いオランダを研修先に選びました。オランダではPolyTraumaの初期診療において外傷外科医が主導権を握っていて、その人たちは普段骨接合をメインにしているらしいと聞き、日本で多発外傷の初期対応で開胸や開腹止血を見ているだけの自分にもやっとすることもあったので、Trauma Surgionがどのようなことをしているのかがとても興味がありました。また自分のいる長崎がオランダと古くから交流があり、オランダという国に興味があったのも研修先を考えた理由の一つでありました。

ErasmusMCのTrauma部門には教授を含め8名のスタッフに加えレジデントが勤務しています。朝は7時45分から全体(移植や胸腹部外科と血管外科などで整形は別)で前日の当直医による前日の入院、病棟の患者で変化のあった人、本日の緊急手術予定のカンファレンス(申し送りがすっきりして短くあまり時間はかかりませんがオランダ語で行われるのでわかる単語を拾ってどんな患者なのかを理解できるかどうか程度)があり、Traumaの手術にほぼ朝から晩まで参加するという日々を送っていました。夕方は16時からのカンファレンスが終われば手術がなければ終了でしたが、カンファレンスに出ずその日の担当の先生と手術に入っていることが多かったです。症例数は長崎に比べると多いかなといった印象でしたが多彩な症例を見ることができました。また日によっては外来見学や病棟の包交を一緒に回ることもでき、システムの違いや外来フォローの仕方なども見ることができました。

オランダ人は基本的に英語を流暢に話すことができ、外傷のカンファレンスも自分が参加しているときは英語で行われていました。が議論が白熱するとオランダ語になりあとで何の話をしていたのかを確認することもままありました。またオランダ人はとても背が高く(平均が男:180㎝ちょっと、女:175㎝弱)、日本ではでっかいやつ扱いされていた自分も病院では少しだけでかい人になれました。(それでも手術室ではアジア人にしてはでかいねって言われてましたが。。。)仕事に関しては基本的にオランダ人であっても骨折は骨折なのでAOの原理原則に沿って治療が行われていました。基本的にはしっかり展開して整復して固定するので手術時間も短く、麻酔もどんどん順番にかけていくので手術室の回転はかなり早かったのですが、諸外国と同様時間外にかかってくると次の手術は翌日に回されていました。小児は小児専用の病棟(OPE室もありスタッフも小児専門)や一般病棟の中にも感染専用の病棟もあり、それぞれで特化した診療が行われていました。

全てにおいて感じたことですが欧米のシステムは日本のシステムと比べてとても効率的でした。麻酔や手術のアシスタント(看護師とは別)はそれぞれのスペシャリストで、手術室アシスタントは機械や術式にも精通しておりレベルは高かったです。長崎大学もAOコースに行った看護師さんもいて定期的に研修会もしていますが、それでも及ばないと感じました。入れ替えもリカバリー室を利用して行われるためスムーズで日本ではしばしばある医者が何かを待つ時間はほとんどありませんでした。その分昼ご飯を食べる時間も短いですが手術室にパン、ハム、チーズ、パンに塗るジャムなど、カップスープがタダで置いてありそれを昼には食べてずっとOPEをしていました。術中透視も日本ではほとんどのところで医師がしないといけないところが多いと思いますが、基本的には放射線技師が来て透視を出していました。

オランダの医学教育についてお話ししますと、日本と同じように6年間medical schoolに行き、まず最初の試験に合格後日本でいう研修医(General)が2年間あります。その後residentに採用されれば(採用されないこともあり、その時は採用されるまでひたすら試験を受けないといけない)外科医になるのであればSurgionのfellowが6年間(最初の四年は一般外科、血管外科、脳外科などを回り、最後の二年でspecialtyとしての科を回るとのことでした)必要です。その後fellowやstaffになって勤務するという形になっていますが、大きなところの採用はそれぞれ難しく、また日本では研修医をやっているとそのまま後期研修医に上がれたりするところもありますが、オランダでは横一線で一番いいと思われた人が採用されるとのことでした。それぞれの段階でセレクションが行われるためみなとても勉強熱心でした。

このようなシステムのためオランダでは整形外科医と外傷外科医がそれぞれ独立して存在しており、AOコースなどではどちらの先生も参加されているとのことでした。自分は外傷にいたので整形外科との接点は週一回のカンファレンスしかありませんでしたが、共存しており、急患の対応も週に2回は整形外科が対応しているなど日本とは違うなと思う点も多々ありました。

滞在を通して感じたことは多くありましたが、これらは日本で頑張っていても感じられなかったと思います。短い時間でしたが外国の医療現場に身を置く事で日本の良さ、問題点を感じることが出来、とてもいい経験になったと思います。語学や資金の問題などもありますが、若い先生には早いうちに一度日本を離れ違う環境を経験し、今の自分の環境を客観的に見る機会を得てほしいなと思います。

個人的には外傷外科医がショックバイタルの腹腔内出血を開腹して止血しているのを見ると、日本にもこれからこういう人間が増えて来ればいいのになと思うとともに、自分としてはこれからその道を志すよりも、外傷整形外科医としてよりqualityの高い整形外傷の診療をやらないといけないと考えさせられた滞在でした。

最後になりましたが、留学を心よく許可していただいた尾﨑誠教授、宮本俊之外傷センター長をはじめとした長崎大学整形外科教室の皆さん、そして留守中に外傷センターで働いていただいた全ての皆さんに感謝の意を伝えたいと思います。